組合運営Q&A

III 組 合 員
【出資・出資金】
 
21 組合の債務に対する組合員の責任について
  1. 組合の借入金、買掛金等の対外債務に対する組合員の負うべき責任の限度については中協法第10条の出資金を限度とする有限責任は絶対的なものであるか。
    例えば、総会において、各自の出資金以上の金額を負担すべきことを議決した場合、あるいは、組合員のある特定の者を指名して負担せしめることを議決した場合等、この議決は有効であるか。
  2. 上記に関して貸付金、売掛金等の未回収のため、借入金等の返済不能を生じた場合、責任は誰が負い債権の追及はどこまで及ぶか。
  3. 赤字累積による清算の場合はどうか。
  1. 組合がその事業の遂行上、第三者と取引をし、借入金、買掛金等の債務を負い、かつその弁済が不能となった場合において、組合員が負うべき責任は、その出資額を限度とし、総会その他の議決をもってしても、これを超える責任を負わせることはできないものと解する(中協法第10条第5項)。
    なお、組合が借り入れた資金を組合員に貸し付けた場合、組合が共同購買をした物品を組合員に販売した場合等において生じた組合と組合員間の債権債務関係については、出資とは関係なく、組合に対して債務を負っている組合員は、弁済の責に任じなければならない。また、組合の第三者に対する債務について全部又は一部の組合員が組合のために連帯して保証をしている場合(いわゆる連帯保証)に、その保証をした組合員は、個人的に無限の責任を負うことになる。
  2. したがって、設問のごとく、組合員に対して出資額以上の責任を負わせること、組合の債務につき、特定の組合員を指名して弁済の責に任じさせること等を総会において議決し、議決したことをもって負担させることは、法令違反であるから無効である。
  3. 組合財産をもって債務を完済するに足りない場合において、解散をし、又は破産の宣告を受けたときも、組合員の責任は、上述の組合と同様である。
    なお、本問の如き事例も、総会の議決である旨をもって組合員に限度額以上の出捐を強制することはできないが、自主的意思によって負担しようとすることを阻止するものではない。

22 総会における増資議決の効力について
組合の自己資本充実を図るため、今後5年間配当金を出資金に振り当てるべく積み立てることを総会において議決した。この議決は、以後においても効力を有し、本件については以後の各年度には総会の議決を要せず、以後5年間の配当金は自動的に組合の積立金となるものと考えてよろしいか。
ご照会の総会の議決は今後一定期間の組合の方針あるいは計画を議決した程度にとどまると思われ、その範囲において全組合員を拘束するものと考える。しかし、実際の出資金充当のための積立てに当たっては各組合員は必ずしもこれに拘束されるというものではない。
すなわち、組合員の責任は、その出資額を限度とするものであり(中協法第10条第5項)、増資の引受けについても、たとえ総会の議決をもってしても組合員を強制することはできないからである。
したがって、以後の処置としては、各年度に組合員の承諾を得る必要はないが、当初において各組合員別に承諾を得ることが必要である。

23 組合出資の差押えについて
債権者である「組合員A」の申請により、裁判所より、組合に対して、債務者たる「組合員B」の組合出資金について「債権差押並びに転付命令」が発せられた。
この事態に際し次の点をご教示願いたい。
  1. (1)組合員の持分と組合員資格はどうなるか。
  2. (2)差し押えた持分又は出資証券が競売される事態に当該組合員が脱退若しくは譲渡を認めない場合。
  3. (3)前項において、当該組合員が譲渡を認めた場合、組合がそれを承認しないとき。
  1. (1)債権者Bの組合員資格は喪失するものでなく、ただ組合よりの配当金取得ができなくなるだけであり、組合員Bの持分が変わるものではない。したがって、組合員Bが脱退し、持分払戻しのできる事態にならない限り転付命令が発せられることには疑問がある。
  2. (2)組合員が脱退又は譲渡を認めない限り、債権者たる組合員AはBの出資あるいは持分を取得又は承継することはできない。なお、ご質問の競売については、組合の出資証券は有価証券でなく、単に出資したことを証する書面であるから、当然競売ということはあり得ない。
  3. (3)中協法第17条によって、持分の譲渡は組合が承認しない限りできないので、たとえ組合員が譲渡を承認したとしても譲渡は行い得ないことになる。

24 出資証券の質入、担保について
事業協同組合の出資証券は、組合の承認があれば金融機関等に担保あるいは質入れができるか。
組合出資証券の質入を禁止する法律規定は何もないので、質入れは可能であるが、出資証券は自由に譲渡できず、それ自体換金価値を有する有価証券ではないので、質権の対象物たり得る価値はほとんど有していない。したがって組合としては、これに承諾を与えないことを原則とすべきと考える。

25 出資証券紛失の際の取扱いについて
協同組合の組合員が、その出資証券を紛失した場合、組合及び組合員はどのような手続をしたらよいか。
出資証券は、市場性を有する証券ではないから、一般の有価証券と同様に取り扱う必要はなく、例えば預金通帳、領収書等の紛失の場合の取扱いと同様組合員より紛失届を提出させ、それにより組合は新たに証券を再交付するだけで差し支えない。したがって、公示催告の手続は要しない。

26 行方不明組合員の出資金整理について
組合員Aは、○年1月30日に組合に加入し、×年12月30日まで組合を利用していたが、その後行方不明となった。組合としては、Aの出資を整理し実質上の組合員の出資のみとしたいが、どのような処理が適当か。なお、Aの組合に対する負債はない。
出資を整理するには、当該組合員が組合を脱退することが前提となり、ご照会の場合の行方不明組合員については資格喪失による脱退か、又は除名による強制脱退が考えられる。具体的事情が不明で判断し兼ねる点があるが、もし行方不明と同時に事業を廃止しているのであれば、資格喪失として処理することが可能と解する。この場合、組合員たる資格が喪失したことを理事会において確認した旨を議事録にとどめると同時に、内容証明郵便をもって持分払戻請求権の発生した旨の通知を行うことが適当と考える。除名は総会の議決を要し、この場合除名しようとする組合員に対する通知、弁明の機会の付与等の手続が必要であるが、組合員に対する通知は組合員の届出住所にすれば足り、この通知は通常到達すべきであったときに到達したものとみなされるから一応通知はなされたものと解される。弁明の機会の付与については、その組合員が総会に出席せず弁明を行わない場合は、その組合員は弁明の権利を放棄したものとみなされ、除名議決の効力を妨げるものではないと解される。
なお、除名が確定した場合は、資格喪失の場合と同様の通知とするのが適当である。
以上の手続により、当該組合員に持分払戻請求権が発生するが、その請求権は2年間で時効により消滅するので、時効まで未払持分として処理し、時効成立を待ってこれを雑収入又は債務免除益に振り替えるのが適当と考える。
 
【加入・加入金】
 
27 加入拒否の「正当な理由」の解釈について
中協法第14条は、組合員資格を有する者であっても、組合は、正当な理由があれば加入を拒否できると解されるが、その正当な理由とは、どのような理由をいうのか。
「正当な理由」とは、組合員資格を有する者に対して一般的に保障されている加入の自由が具体的な特定人に対して保障されないこととなっても、中協法の趣旨から、あるいは社会通念上からも不当ではないと認められる理由をいう。
「正当な理由」として認められるものとしては、次のような場合が考えられる。
  1. (1)加入申込者自体にある理由
    1. ① 加入申込者の規模が大きく、これを加入させると組合の民主的運営が阻害され、あるいは独占禁止法の適用を受けることとなるおそれがあるような場合
    2. ② 除名された旧組合員が除名直後又はその除名理由となった原因事実が解消していないのに加入申込みをしてきた場合
    3. ③ 加入申込み前に員外者として組合の活動を妨害していたような者である場合
    4. ④ その者の日頃の行動からして、加入をすれば組合の内部秩序がかき乱され、組合の事業活動に支障をきたすおそれが十分に予想される場合
    5. ⑤ その者の加入により組合の信用が著しく低下するおそれがある場合
    6. ⑥ 組合員の情報、技術等のソフトな経営資源を活用する事業を行う際に、当該経営資源や事業の成果等に係る機密の保持が必要とされる場合において、例えば、契約・誓約の締結、提出などの方法により機密の保持を加入条件とし、これに従わない者の加入を拒む場合(ただし、条件はすべての組合員に公平に適用されることが必要である。)
  2. (2)組合側にある理由
    組合の共同施設の稼動能力が現在の組合員数における利用量に比して不足がちである等、新規組合員の増加により組合事業の円滑な運営が不可能となる場合
なお、「正当な理由」に該当するか否かについては、その事実をよく調査し、その実情に応じて判断するのが適当と考える。

28 加入金の性格と定款記載について
当組合の定款には、脱退者の持分の払戻しについては、「組合員の本組合に対する出資額を限度とする」旨の規定をしている。定款参考例によれば、このように規定している組合では加入者からの加入金を徴収する旨の規定は削除することとされている。加入金は定款の定めがなければ徴収できないということであるので、このことにより、当組合では、加入金は徴収できないと考えられる。
加入の際の事務手数料的なものを徴収することはできないのか。この場合、定款に「加入金でなく、「加入事務手数料」を徴収できる旨の規定を置くことはできるか。
中協法では、組合が定款で定めた場合には加入金を徴収することを認めている(第15条、第33条)が、この加入金の意味については、特に規定していない。しかし、その趣旨から広義に解釈すれば、持分調整金と加入事務手数料を意味するものと考えられる。
持分調整金とは、持分の算定方法について、改算式算定方法(組合の正味資産の価額を出資総口数で除して、出資1口当たりの持分額を算定する方法。したがって組合員の持分は均一となる)を採っている場合において、組合財産の増加によって出資1口当たりの持分額が出資1口金額を超えている場合に、その超過した部分に当たる差額を新規加入者より徴収し、新規加入者と既存組合員との持分についての公平を保とうとするものである。
このように、持分調整金は、改算式の持分算定方法を採用する組合において徴収することになるが、たとえ改算式を採っている組合でも、貴組合のように、定款の規定により脱退者の持分の払戻しが「出資額を限度」として行われる組合にあっては、常に払戻額が出資額を上回ることはなく、新旧組合員の持分の調整を行う必要が生じないので、持分調整金としての加入金をとることはできないとされている。定款参考例でいう「加入金」は、この持分調整金を意味していると解されるので、このような組合にあっては加入金の項を削除するよう指導されている。
次に、加入事務手数料についてであるが、これは組合に加入する際に要する事務的費用、例えば出資証券や組合員証の発行費用などであるが、これを加入者に負担させるために徴収するものをいう。この加入事務手数料は、広く加入金の一種と考えられるが、これはあくまで実費の範囲を超えないものであり、その性質上それほど多額なものとなり得ないものである。このような実質的なものの徴収は、加入金の規定によらなくても組合として徴収し得るものである。
しかし、このことは、加入事務手数料を徴収できる旨の定款記載を禁じるものでなく、例えば徴収の根拠を明らかにしておく等の必要がある場合には、この旨を掲載しても差し支えないと考えられる。
(注)持分の算定方法には、前記の改算式算定方法のほかに、加算式算定方法がある。(「30持分の算定方法について」参照)
 
【持分】
 
29 持分の算定方法について
定款参考例の加算式持分算定方法と改算式持分算定方法との違いについてご教示願いたい。
持分の算定方法は、法に何らの規定がないので、定款で自由に定めてよいわけであるが、一般にその方法として改算式(又は均等式)算定方法と加算式(又は差等式)算定方法がある。
改算式算定方法は、組合の正味資産(時価)の価額を出資総口数で除することにより出資1口当たりの持分額を算定し、それに各組合員それぞれの出資口数を乗じて各組合員の有する持分額を算定する方法である。
この方法によるときは、出資1口当たりの持分額が均等となるので、計算、事務処理が簡便であるが、原始加入者及び増口分の出資の払込みに際しては、持分調整金を徴収する必要が生じる。
加算式算定方法は、各組合員について、事業年度ごとに、組合正味資産(時価)に属する出資金、準備金、積立金その他の財産について、各組合員の出資口数、事業の利用分量(企業組合にあっては従事分量)を標準として算定加算(損失が生じた場合はそのてん補額を控除)することによって、各組合員の有する持分額を算定する方法である。
この方法によるときは、各組合員の持分は、加入の時期、組合事業の利用分量等により不均一となるので、計算・事務処理が煩雑となるが、持分調整の問題を生じないし、また、組合員の組合に対する権利義務の表示について忠実であると言える。
このように、この2つの方法にはそれぞれ特徴があり、組合の実情に応じて適宜選択する必要がある。

30 改算式から加算式への持分算定方法の変更について
当組合では、これまで改算式持分算定方法を採用していたが、このたび加算式持分算定方法に変更したいと考えている。その場合、どのような点に留意すべきかご教示願いたい。
加算式持分算定方法を採用する場合の留意点について説明する。
  1. (1)加算式持分算定方法の採用の意義
    加算式持分算定方法は、従来から改算式持分算定方法を採用している資産保有組合において、①土地等の含み資産又は内部留保が大きいため、持分調整金としての加入金の額が増大し、その結果新規加入が阻害されるような場合、あるいは、②組合への加入年数(組合員歴)や事業利用による貢献を持分に反映させようとする場合に適する持分算定方法であることに、まず留意する必要がある。
    したがって、加算式持分算定方法は、持分の払戻し方法が、全額払戻し又は多額の一部払戻し方法(帳簿価額以上の額を限度とする払戻し方法)である場合に意味があり、少額の一部払戻し方法(例えば、出資額限度方式や出資額以上であるが帳簿価額に満たない額を限度とする払戻し方法)である場合には、採用の意味は少ないと考えられる。
    また、持分の払戻し方法が一部払戻しの組合で、加算式持分算定方法を採用する場合には、定款に規定される、持分の算定の内容と持分の一部払戻しの内容とは当然異なることになる(持分計算額よりも一部払戻し額の方が少ない)ので、持分の払戻しの際、組合員に誤解をされないよう注意を要する。
  2. (2)加算式持分算定方法の採用の手続
    まず、既存組合の加算式持分算定方法の採用の決定は、通常の定款変更の議決方法(特別議決)で足りるものと解される。
    改算式から加算式に持分算定方法を変更する組合においては、加算式方法採用時の既存組合員の持分は、各持分構成資産について各組合員の出資額により算定することとなる。
  3. (3)組合財産の評価
    組合財産のうち、帳簿価額と時価が異なる資産については、時価(一括譲渡価額)評価する必要がある。その評価方法は、①対象となる資産ごとに明確に定めておくこと、②客観性があり、かつ、計算が容易であることが必要である。
    組合財産の評価に大きく影響する土地の評価方法は、様々な方法が考えられるが、一般に妥当と思われる方法としては次のものがあげられる。
    1. ① 固定資産税評価額倍率方式
      通常の固定資産税評価額を時価の○○%程度とみて、固定資産税評価額を○○%で除して時価に評価還元する方法
    2. ② 相続税評価額倍率方式
      通常の相続税評価額を時価の○○%程度とみて、相続税評価額を○○%で除して時価に評価還元する方法
    3. ③ 不動産鑑定士による評価方式
      不動産鑑定士にその評価を依頼する方法。この場合は、1人の鑑定士のみによる評価では不十分であり、通常5人の鑑定士に依頼し、これらの評価額のうち最高値と最低値を切り捨て、中3値の平均値をとる方法が適当である。
      なお、含み資産の評価方法については、規約又は総会の議決によって定めておくことが必要である。

31 持分払戻方法変更のための定款変更の議決方法について
持分全額払戻制をとる組合が、出資額限度の払戻方法に定款変更する場合は、組合員にあっては既得権の放棄を意味するので、総会における定款変更議決とは別に組合員全員の同意が必要ではないか。
持分払戻方法に関する定款変更については、中協法第53条による特別議決をもって足り、特に組合員全員の同意は要しないものと解する。
すなわち、中協法第53条において定款変更は特別議決によること、また持分払戻に関して同法第20条に「…定款の定めるところにより…全部又は一部の払戻しを請求…」と規定するだけであり、中協法上組合員全員の同意を要する規定がないので、これが法律上明文の規定がないことを根拠として、通常の定款変更の手続で足りるものと解する。
なお、持分については、既得権たる財産権と解する見解のほか、脱退等により現実化する潜在的な期待権とする見解もあるので、本件については、総組合員の同意を得ることは好ましいことではあるが、現行法上は法53条の特別議決をもって足りるとする見解は中小企業庁においても採用しているものである。

32 滞納処分による持分の差押えについて
国税徴収法(昭和34年法律第147号)によれば、税務署長は企業組合等の組合員の国税滞納に対してその持分を差し押え、その持分を再度換価に付しても、なお買受人がないとき等の場合は組合等に対して、その持分の一部の払戻しを請求することができる(同法第74条)とある。しかし同条には、事業協同組合については特に規定していないが、事業協同組合にも同条の規定が及ぶものかどうか。
また、仮に上記の請求が正当であるとした場合に、当該組合の持分払戻方法が出資額限度のときは、差押え請求であっても、出資限度として払戻請求に応ずればよいか。
国税徴収法第74条は、企業組合に限らず中協法に基づく他の協同組合にも適用されると解する。本条は、その適用者について「……中小企業等協同組合法に基づく企業組合、信用金庫その他の法人で組合員、会員その他の持分を有する構成員が任意に(脱退につき予告その他一定の手続を要する場合には、これをした後任意に)脱退することができるもの……」と規定しているが、そのなかで、「その他の法人で組合員、会員その他の持分を有する構成員が任意に脱退することができるもの」の中に、企業組合以外の協同組合も当然含まれると解する。
また、払戻請求の限度については、定款に出資額を限度として持分を払い戻す旨の規定があれば、本条による持分の払戻請求についても、出資額を限度として払戻請求に応ずればよいと解する。なぜならば、当該組合員が組合において現に有する権利以上のものを本条によって請求することはできないからである。

33 持分の譲渡について(1)
中協法第17条第1項によれば、組合員は、その持分の譲渡について組合の承諾を得なければならないこととなっているが、組合は、その承諾を総会で決定しなければならないか、あるいは理事会でよいか。
また、同条第2項においては、持分の譲受人が組合員でないときは加入の例によらなければならないこととなっているが、加入の例によるとは、どの範囲を意味するのか。
持分譲渡の承諾は、業務の執行に属すると考えられるので、加入の承諾の場合と同様(事業協同組合定款参考例第9条第2項)理事会で決定すれば足りるものと解する。
「加入の例による」とは、加入の場合に準じて取り扱うということであるから、譲受人は組合員たる資格を有する者であって、かつ、その持分を譲り受けると同時に組合に加入する意思を有していなければならないことになる。また、組合の側においては、その譲渡の承諾に当たっては、正当な理由がなければこれを拒否し、又は承諾に際して不当に困難な条件を付してはならない。

34 持分の譲渡について(2)
  1. 他人の持分の全部又は一部を譲り受けて組合に加入しようとする者からも加入金を取る定めをしてもよいか。
  2. 中協法第17条第3項の「持分の譲受人は、その持分について、譲受人の権利義務を承継する」とあるが、この場合の権利義務の承継とは具体的にどのようなことをいうのか。また設問1との解釈上の関連性について説明されたい。
  3. 加入に関し、定款に「他人の持分の全部又は一部を承継した場合はこの限りでない」と規定したとき、この後に「この場合の全部又は一部とは5口以上をいう」と但書きしてもよいか。
  1. 加入金は持分調整金としての性格を有するものであるので、持分譲受加入の場合には徴収できないと考えられる。なぜならば、持分譲受加入の場合には、出資の払込手続を必要としないので、定款に定めた出資1口金額とこれに応ずる持分額との調整を行う必要が生じない(既にこの点を考慮して持分の譲渡価格が当事者問で決定されたものと考えられる。)からである。
  2. 組合員の持分とは、組合員がその資格に基づいて組合に対し請求し支払を受けるべき財産上の金額と、これを含めた組合員として有する権利義務を包括的に指す組合員たる地位ともいうべきものの二義があると解され、本条、第15条、第16条、第61条にいう持分は後者を意味し、第20条、第22条は前者を意味している。
    したがって、法律上の持分が、いずれの意義に用いられているかは、個別的に判定すべきである。
    このような観点から本条における持分を組合員たる地位の譲渡と解する限り議決権、選挙権、出資義務、定款服従義務等、組合員として当然有する権利義務も承継されるとともに持分払戻請求権又は出資払込義務も承継されるのである。
    1との関連について、持分の譲受加入の場合には原始加入の場合と異なり、出資払込及び持分調整金の問題が生じないのは、本条の持分を前述のとおり解すれば、持分の譲渡は組合員の入替を意味する場合もあるから、その譲受に伴う代金(払込済出資額と持分調整金との合計)の授受は当事者間で行われ、組合と譲受人との間には関係を生じないからである。
  3. 貴組合の定款において、貴組合への出資口数を最低5口以上とし、また、現組合員のすべてが5口以上の出資を有しており、かつ5口未満の口数が生じた場合の処置が明確であれば差し支えないと解する。つまり、上記の場合以外においては新規加入者と譲受加入者との均衡を失すると思われるからである。

35 脱退組合員の持分債権の保全処分について
組合員Bの倒産によりその債権者Aより組合あてに債務者であるBの持分の支払停止命令(裁判所より)をしてきた。
そのため、組合は、当年末決算において持分算出をしたが、支払を中止し、現在組合にて保管しているが、その処置を如何にすべきか、次の点をご指導頂きたい。
  1. (1)債務者Bの持分払戻請求権は、仮差押えのため、中協法第21条(時効)には該当しないものと思われるがどうか。
  2. (2)仮に組合が、この差押え該当持分を組合外に処分するためにはどのような手続が必要か。
  1. (1)組合に対してなされた保全処分(仮差押)は法定手続に従い有効に執行(処分決定の送達)がなされたものであるから、この場合、組合は供託等による持分払戻金の組合外への処分の道はない。したがって、債権者AがBとの間の本訴を提起して、転付命令又は取立命令を得て直接請求してくるか、また債務者Bが仮差押を取り消して組合に請求してくるのを待つよりほか、他に方法はないと考える。
    なぜなら、組合は持分払戻金を保管することにつき何等の不利益を受けるものではなく当該仮差押に及んだAB間の訴訟上の当事者たる資格を有しているからである。
  2. (2)債権者Aが仮差押をしたことが、民法にいう時効中断事由に該当するかどうかについては、学説、判例に争いがあり、判例は債務者Bの有する第三債務者(組合)に対する債権をその債権者Aが差し押えてもその債権(持分払戻請求権)の消滅時効の進行はそれによって中断しないものとしており、したがって、この場合には仮差押のあるなしにかかわらず2年で時効が完成することになる。
    学説は判例の立場に反対で、この場合の差押えも債権消滅時効の中断事由になるとするのが一般で、この場合は、請求権は時効にかからず、依然存在することになる。

36 持分払戻方法を変更した場合の新定款の効力について
脱退者に対する持分を全額払い戻す旨の定款規定を出資額限度に改めるための臨時総会が適法に開催され、議決が有効に成立し、当該事業年度にこの変更申請が認可された場合において、次の者に対する持分の払戻しに関する定款の適用については、各々次のように解釈するが適当か。
  1. (1)臨時総会で反対を唱え、容れられなかったため脱退を予告した組合員
    (本県の解釈)
    自由脱退の場合は、脱退を予告した組合員といえども事業年度の終了日までは、組合員たる地位を失っていないし、組合に対する権利義務も他の組合員と同様に有しているのであるから、年度途中で変更のあった場合でも、変更後の定款によって持分の払戻しを行うこととなる。
  2. (2)死亡等による法定脱退者
    (本県の解釈)
    死亡等による法定脱退の場合は、組合員の意思にかかわらず法定された事由に該当するに至ったとき法律上の効果として直ちに脱退せざるを得ず、組合員たる地位及び権利を失うのであるから、持分の払戻しはその脱退の時点において効力を有していた定款に準拠すべきであると解する。
(1)、(2)とも貴見のとおりである。
 
【脱退】
 
37 脱退を申し出た組合員の取扱い等について(1)
自由脱退者の取扱いについて
組合員は、「事業年度の末日の90日前までに予告し、事業年度の終了日に脱退できるが(中協法第18条)、事業年度末までは組合員たる地位を失ってないから、その組合員も他の組合員と同様に議決権の行使、経費を負担する等の権利、義務を有するが、脱退者の申出の点についての効力とその取扱い方について、
  1. (1)①A組合員5月10日に脱退の申出をした場合
    ②B組合員7月2日に脱退の申出をした場合
    ③C組合員12月30日に脱退の申出をした場合
  2. (2)脱退を申し出た組合員は、その後の組合運営についての権利義務を主張し行使できるか。
  3. (3)脱退を申し出た組合員が、申出日以降組合賦課金を年度末まで納入しない場合の取扱いについて。
  4. (4)未納賦課金を払戻持分と相殺して差し支えないか。中協法第22条からして相殺することも妨げないと解されているか。
設問の組合事業年度終了日が3月31日であれば、(1)の①~③は、いずれも90日の予告期間を満足させているので、脱退の申出があった日の属する事業年度末までは、組合員たる地位を失わないから、脱退の申出をしない組合員となんら差別してはならない。したがって、(2)についても事業年度末までの期間内は組合員としての権利義務を負わなければならないし、また(3)にいうごとく、賦課金を納入しないならば組合員としての義務を怠ることになり、除名、過怠金の徴収等の制裁も定款の定めに従って可能となるわけである。(4)については、脱退した組合員が組合に対して未納賦課金その他の債務を負っている場合は、組合は中協法第22条の規定による持分の払戻停止によって対抗でき、あるいは民法第505条の規定により払い戻すべき持分とその債務と相殺することもできる。

38 脱退を申し出た組合員の取扱い等について(2)
  1. 中協法第18条に、組合を脱退するには「90日前までに予告し、事業年度の終りにおいて脱退することができる」とあるが、例えばある組合でなされた議決が一部の業態の組合員に著しく不利で営業不能となるため、仮に9月1日に脱退を通告しても、翌年3月末日までは脱退できないか。また、その間、議決に拘束されるか。
  2. 組合員が転廃業して組合を脱退したが、1ヶ月又は2ヶ月後再び元の事業を始めた場合、前に加入していた組合の拘束を受けるか。
  1. 中協法第18条に自由脱退の予告期間及び事業年度末でなければ脱退できない旨を規定した趣旨は、その年度の事業計画遂行上、組合の財産的基礎を不安定にさせないためであるから、設問のような場合、すなわち9月1日に脱退を予告しても翌年3月末日迄は脱退できない。したがってその間、除名されない限りは依然組合員であるから議決にも拘束されるし、組合員としての権利を有し、義務を負わなければならない。
  2. 組合員が転廃業をすれば、組合員資格を失い、法定脱退することになるので、組合員資格としての事業を再開しても、直ちに組合員となるわけでないから、その組合の拘束を受けることはない。

39 脱退予告者の権利について
  1. 自由脱退予告者は、持分が計算される期末までの期間は組合員であり、持分権があると解釈してよろしいか。
  2. 1の組合員は、その持分を確定する決算総会(通常総会、通常5月に開催される)に出席して、組合員権を行使することはできないと解釈してよろしいか。
  3. 脱退予告者が総代である場合、期末までの期間に総代の任期満了による改選があったときは、その組合員は総代の選挙権並びに被選挙権があるか否か。
  1. 組合員は、中協法第18条の規定により、脱退することができるが、この場合、予告を必要とし、かつ、脱退の効果は事業年度末でなければ発生しない。したがって、組合員は予告後も年度末に至るまでの間は依然として組合員たる地位を失うものではなく、それまでの間は、組合員としての一切の権利を有し、かつ義務を負うものである。
  2. 脱退の効果は、事業年度末において発生し、それ以後は、組合員たる地位を失うものであるから、組合員として事業年度終了後の総会に出席することはできない。
  3. 脱退届を提出している組合員が総代であっても、事業年度末に至るまでは組合員たる地位を失うものではないから、総代の選挙権及び被選挙権を有する。

40 脱退予告取消しの効力について
4月1日から3月31日までを事業年度とする組合において、9月末までに脱退予告の書面を提出した組合員が、10月1日以降翌年3月31日までの間に脱退予告の取消しを届け出た場合に、脱退予告の取消しができるものと解すべきか。
脱退が組合員の自由意思によって行い得ることは、協同組合の根本的原則である。しかしながら、随時脱退を認めれば、組合の事業計画及び資金計画が常に不安定となり、組合の事業を妨げ、又は組合の債権者の利益を害することになるので、脱退には予告を必要としているものであるが、予告後、その取消しを行っても予告が上述の趣旨により必要とされていることを考えれば、特に弊害を生ずるものとは考えられないので取消しはできると解する。
 
【除名】
 
41 除名要件について
法定脱退となる除名の用件について次の点を回答されたい。
  1. (1)定款参考例第13条第1号に規定する「長期間にわたって組合の事業を利用しない組合員」は、なぜ除名しなければならないか。
  2. (2)(1)の場合の「長期間」とは、何ヶ月以上か。
    例えば利用については1年以上とか経費支払を1年以上怠るとか(1年以内では対象とするには過酷とも思われ、反面、経費支払を1年以上怠っては組合の年度事業計画の遂行に支障がある)。
  
  1. (1)組合は、組合員が協同して事業を行うべきであって、長期間にわたって組合の事業を利用しないような場合は、組合制度の主旨に反し、また、同志的結合の意思を欠いたものと認められ、組合員たる地位を与えておく理由がないからである。
  2. (2)何ヶ月以上が長期間であるかは、個々の場合に則して具体的に判断するほかはない。組合事業に対する不熱心さが明らかである程度に長期間であることを要するわけで、実情に応じ判断すべきである。
    除名理由における「長期間にわたって組合の事業を利用しない組合員」の長期間とは、社会通念上許される範囲の長期間で、貴組合及び組合員自体が判断し決定すべきものであって、一般的に何ヶ月、何年とは定められない。

42 組合の申し合わせをやぶった組合員の除名について
小売業者の組合において、同じ商店街にある大資本経営のスーパーマーケットヘの対抗上、同スーパーに入らないことの申し合わせを行った場合、同スーパーに入ったことをもって、同組合定款の除名規定「組合の事業を妨げ、又は妨げようとしたとき」に該当するものとして除名するのは適当か。
なお、除名された組合員は営業ができなくなる事情にあるので、憲法上の営業の自由とも関係があると思われる。
また、定款にスーパーに入った場合は除名する旨規定することは適当か。
組合員が組合から除名されることによって、営業を続けることが不可能となる場合、その除名は、独禁法第2条に規定する不公正な取引方法等に該当し、同法第8条第1項第3号から第5号違反となると解される。
また、組合員がスーパーマーケットに入った場合、除名する旨を規約又は定款に定めることは差し支えない。しかし、その結果、除名された組合員が、市場条例等の関係から、事実上営業を続けることが不可能となるなど、営業活動に著しく不利益を与えるような場合は、規約又は定款はその部分について無効となる。
なお、本件と類似事件の審決例として、○○海産物仲買人協同組合の加入拒否の例がある。この事件は、スーパーマーケットを経営する事業者に対して、組合がその者の組合への加入を拒否したため、その事業者が商品購入が不可能となり営業ができないという事例であるがこれに対しては、独禁法第8条第1項第3号及び5号違反の審決が下されている。
 
【その他】
 
43 組合員の責任の限度について
中協法第10条第5項によれば、「組合員の責任は、その出資額を限度とする」とあり、また法第20条第3項によれば「組合の財産をもってその債務を完済するに足りないときは、組合は、定款の定めるところにより、脱退した組合員に対し、」とある。この条文のうちルビの部分は「未払出資金があればこれを請求し得る」という解釈と「その負担に帰すべき」という語句により、前述の解釈を拡大して「組合員の責任は出資額を限度とする」という第10条第5項の規定を無視する解釈が成り立つことも考えられるかどうか。
また一例として出資金50万円、諸積立金20万円の組合が共販事業の失敗により欠損金100万円を生じた。積立金を取り崩し残額80万円を組合員が特別賦課金をもって補てんする議決を行ったが、一部組合員は出資金をもってそれに充当させ、脱退することを申し入れた。
この場合組合の財産をもって債務を完済し得ない30万円について脱退組合員に請求できないか。なお、この欠損金は数年にわたり、累積され既に先の総会において承認を受けているものであり、その再建を図るため特別賦課金の徴収を議決されたものである。
中協法第20条第3項にいう「その負担に帰すべき損失額の払込……」の条項は脱退者の持分の払戻しに関し規定されたものであって、法第10条5項の規定により、組合員は明らかに有限責任であるから、当然、「組合の未払込出資金があり、かつ、欠損を生じている場合においては、未払込出資金額を限度としてその負担に帰すべき損失金額の払込を請求することができる」と解すべきである。もちろん、定款に損失額払込の規定を設けない場合には、請求権がないことは法の規定からして明白である。
よって貴見第2の解釈の如く「その負担に帰すべき……」のみを抽出してこの語句を拡張解釈することは妥当ではないと解する。
なお貴会の解釈のようにもとられる本規定は、無限責任の場合の規定であって、有限責任の場合の規定ではないとの見解もあるが、一応これは立法論として別に論ぜられるべき問題であると思う。
例題の場合の、総会で議決された組合の欠損金補てんについては、当該組合員が、特別賦課金をもってこれに当てることを承認したものでなければこれを請求することはできないものと解する。すなわち、法はその第10条第5項において「組合員の責任は、その出資額を限度とする」と定めているので、出資額を上回る経費の分担とか、損失金の負担とか法第10条第5項との関係を検討してみると、まず、法は「出資額」を限度とするものである旨を規定しているのであるから、組合員が組合に対して負う財産上の出捐義務は、その額において有限であり、組合員がその額を超えて、財産上の出損義務を負担することがないことは明らかである。また、その限度である出資額というのは組合員が出資を引き受けた額、すなわち加入する際に引き受けた額のままであることもあろうし、加入後に他の組合員の持分を譲り受けることもあるだろうが、要するに組合員が自らの意思で引き受けた出資の額と解するのが相当であろうと思う。
総会の議決又は定款の変更によって出資1口の金額の増額とか、出資額を上回る経費又は損失金について任意に賦課せしめることができるとすれば、法律上は、際限なく組合員の負担を加重させることが可能となり、組合員の責任には何ら「限度」が存在しないこととなって、法が第10条第5項に定めた、その額をもって組合員の財産上の出損義務の限度である旨の規定は無意味なものとならざるを得ない。
法第10条第5項の存在を無意味なものとして否定しない以上、同条項は総会の議決又は定款の変更によって加重することのできないもの、すなわち組合員が、組合に対して引き受けた出資の額を超えて財産上の出損をさせられることがない旨を保障する規定と解される。
したがって、問題は、組合が損失金を賦課することによって、組合員に「その出資額」を超えて財産上の出損をしなければならない義務が生ずるかどうかの点にかかっているということになる。
もし組合員に未払込があるならば、これをもって損失の補てんに当て得るので、第10条第5項は何ら関知するところでないが、もしそれを超えて出損すべき義務が生ずるのであれば、それは同条項に抵触することとなる。してみれば組合は法第10条第5項の規定に照らし「その出資額」を上回る経費の賦課とか損失金の負担を課することができないものと解するほかないであろう。しかし、法第10条第5項の規定は、組合員自らの意思によっても「その出資」を上回って負担することを禁止する趣旨を有するものとは到底考えられない。よって当該組合のすべての組合員が同意した場合でもなお負担させることができないという理由はないと思われる。以上の理由により、総組合員の同意がない限り、総会の議決をもってしても、に「出資額を上回る損失金額」を組合員の負担すべき金額として強制することはできず、設問の場合も当該組合員がそれを拒否し脱退するという以上、総会の議決であることをもってこれを請求することはできないものと解する。

44 脱退した組合員の持分受取書に対する印紙税について
組合員が脱退し、払戻持分としての出資金を受け取ったときは、組合員資格を喪失しているため受取領収書には印紙税法が適用されるか。
印紙の貼付について、中協法第20条に定めるとおり、持分は組合員が脱退したときに、その請求権を生ずるのであるから、持分受領のときは、既に組合員ではなく、したがって協同組合員たる特典はなくなり、持分受領書には印紙を貼付する必要がある。

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