組合の事業

2. 事業の選択

事業を成功させる先ず第一の要件は、事業の選択を誤らないことです。組合の事業は、組合の種類によって異なるとともに、同じ種類の組合でも、その組織形態や組合員の業種・業態によっても必要とする事業やふさわしい事業が異なってきます。したがって、どのような事業を行うべきかは一概に言えませんが、事業を選択するうえにおける共通する留意点としては、次のようなものがあります。

■ 組合の目的に沿うもの
組合には、前述の通り各種のものがあり、そのなかから解決しようとする問題に適した組合を選んで設立するわけです。したがって、その組合を選んで設立するからには、その組合の目的に沿った、その組合にふさわしい事業を行うべきであり、このことが事業選択の基本的な基準です。
■ 経営上障害となっているもの
組合は、組合員の事業経営上の問題点を共同の力で解決しようとするものですから、組合員が事業経営上隘路や障害があって困っている問題をとりあげ、これを解決する事業を選ぶ必要があります。
これは事業運営上からも言えることで、組合員の必要性の少ない事業を実施しても、組合員の利用や協力が得られず失敗に終わることになります。
なお、商工組合のような業界を代表する組合では、組合員の事業上の問題点と同時に、業界全体の問題をとりあげ、これを解決する事業を選択すべきです。
■ 実施可能なもの
いくら組合員が必要とする事業でも、組合にそれを実施する体制なり能力が備わっていなければ、実施できませんし、実施しても成功しません。したがって、組合の資金、事業についての知識、人材等を充分勘案して、実施可能な事業を選ぶべきです。

また、組合員のために必要であり、かつ、組合に実施能力がある場合でも、組合員の側に事業利用上の障害がある場合(例:共同購入の場合に、組合員が従来の取引先との取引を止められない事情がある場合など)は、当面、事業の実施を差控えるべきです。

また、実施しようとする共同事業が、他の同業者等によって既に行われている場合は、いたずらに摩擦を起こさないよう留意すべきです。

また、組合の事業といえども、役所の許認可・登録等を要する場合がありますので、許認可等が得られるものか否かについても検討する必要があります。

なお、組合の力が未だ充分でない場合は、例え軽微な事業であっても能力相当な事業を行うべきですが、それが成功すれば、それによって組合員が恩恵を受け組合を認識し協力するようになり、その結果より大きい事業の実施が可能になるという点にも留意下さい。
■ 組合員が広く利用するもの
組合は、組合員に対し機会均等に事業を利用させなければなりませんが、そのため、なるべく全組合員が利用できる事業を選択する必要があります。
しかし、共通の目的があって組合を作ったけれども、組合員の業種・業態が異なるというような場合は、その共通の目的に関する事業を行うのであれば、業種・業態に応じ一部の組合員を対象とする事業を行うことも、そのような事業が他の組合員に対しても行われていれば差支えないものと思います。
■ 長期的な視点が必要
  1. 先に述べたように、能力以上のぼう大な事業を行うことは避け、実施し易い事業を選び、漸進的に高度な事業に進むよう心がけるべきです。
  2. 組合員の事業上の問題事項でも、業界の将来の方向等からみて好ましくない事業は、これの実施を避けるべきです。
  3. 現時点では成り立つ事業でも、それが一時的であり、経済見通しなどから将来性のない事業は避けるべきです。
■ 採算性を考える
組合といえども一つの事業体ですから、採算を無視していては、取引先の信頼も得られなくなり、事業として成り立たなくなり、ひいては組合員に利益を与えることができなくなります。したがって、採算性を充分検討して事業を選択すべきです。なお、その検討は、短期的ではなく、3年とか5年先とかの長期的な見通しに立ったものでなければなりません。
■ 中小企業施策との関連
中小企業には、各種の施策が講じられています。組合としては、なるべく中小企業施策に沿った事業を選ぶことも必要であり、同時に施策の受入れあるいは利用との関連で事業を検討することも必要です。なお、それが事業の成功に大いに役立つことにもなります。
■ 時代の変化に対応する
これは、既に設立されている組合に該当することですが、組合のなかには、余り必要でなくなった事業をいつまでも実施しているような組合があります。このようなことでは、組合の魅力がなくなりますし、また、同じ事業が長期化するとマンネリ化のおそれもでてきます。
中小企業の問題は時代の変化とともに変化しますので、組合員の問題を解決する組合としては、常に組合員の問題や要望を把握し、それに応ずる事業を行うよう心がけるべきです。